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桜餅(長命寺、道明寺)の都道府県別分布について(第一回全国桜餅一斉調査より)

※桜餅日本地図に誤表記があったため、修正致しました。(2024.3.6修正済)

桜餅は、世の中に2種類存在します。ひとつは、東京都墨田区が発祥とされる長命寺桜餅(ちょうめいじさくらもち)です。小麦粉で作られたクレープ状の生地で漉し餡を巻いたもので、関東風桜餅とも呼ばれます。もうひとつは、大阪発祥とされる道明寺桜餅(どうみょうじさくらもち)です。こちらは、道明寺粉を使用したつぶつぶのおはぎのような食感の生地で、漉し餡、または粒餡を包んだもので、関西風桜餅とも呼ばれます。

いずれも桜餅であることには間違いございませんが、各都道府県によってどちらが主流かは違ってきます。互いの地域の桜餅事情を知ることで、違いを知るきっかけとなります。桜餅の違いをきっかけに、ひいては食の違いを知ることで、互いの地域の歴史や地勢、慣習など、食に紐づくあらゆる周辺事情に興味を持ち、実際に足を運んでみたくなるものです。きめ細やかな相互理解は多様性を育みます。あんこを通じて、多様性にさらなる進歩が生まれることで、私どもの理念である「あんこを通じた世界平和」(LOVE ANKO PEACE)にまた一つ近づくことができると信じております。

日本あんこ協会では、2024年2月19日~2月29日にわたり、弊会協会員とともに、全国の桜餅事情を調査する「第一回全国桜餅一斉調査」を実施致しました。(有効回答数:624名) 各都道府県において、長命寺が主流と回答した協会員が80%以上の地域をピンク色で、道明寺が主流と回答した協会員が80%以上の地域を緑色で、またそれ以外の割合で両者がある程度共存する地域を黄色で示しております。

春はご家族やご友人・知人との会話に必ずと言っていいほど、桜餅の話題が出てきます。そんな時、この桜餅日本地図があれば、桜餅について、より深い議論ができ、まさに桜餅トークに“花”を咲かせることができます。是非ご活用下さい。

各都道府県における回答者割合の詳細は以下通りでした。

また、全体での回答者割合は以下の通りでした。

 

道明寺の方が定着割合が高い理由を考察

道明寺が日本全国の約7割と大半を占めていることがわかりました。長い歴史をもつ桜餅である以上、これには様々な理由が複雑に絡み合っていることは間違いなく、道明寺が大半を占めるという理由は一概に特定の要因ひとつに断定することはできません。ただ、大きなひとつの要因として、現代の桜餅の「流通」と「作り方」の相性が考えられます。今や、我が国の桜餅の流通は、コンビニを置いて語ることはできなくなっています。コンビニスイーツはご存じの通り、工場内での機械生産が中心です。既存のあんこスイーツの商品ラインナップには、豆大福や草餅など、包餡機で作られるものが多く存在し、通年商品として売られています。一方で、桜餅は春シーズンのみの季節限定商品です。そうすると、通年商品の製造ラインで季節限定の桜餅を作りたいとなった場合、通年商品の方法と同様に包餡機で作ることのできる商品を開発したほうが良いという考えに至ります。そうすると、小麦粉で作ったクレープ状の生地でこしあんを巻く長命寺桜餅より、道明寺粉で作られた生地であんこを包む(包餡機が活用できる)道明寺桜餅を作るほうが適しているということになります。コンビニという現代の巨大流通ネットワークと桜餅の作り方の相性を考えた時に、道明寺が主流となりやすい状況は整っていると言えます。

島根、鳥取は長命寺が主流である理由

島根県や鳥取県は西日本ですが、桜餅は長命寺が主流という結果が得られました。これは松江の歴史に由来するところが大きいと言えます。明治時代の初め、松江藩(現在の島根県)の元家老であった有沢宗閑(そうかん)が藩の御用菓子司であった面高屋(おもがたや)に東京の長命寺桜餅を伝えたことが、松江の桜餅の起源と言われています。松江は京都や金沢と並び日本三大菓子処のひとつですから、江戸との交流も盛んでお菓子に関する情報も江戸の頃からたくさん伝わっていたのでしょう。松江に伝わった長命寺桜餅はその後、島根県内全域やお隣の鳥取県に広まったのだと考えられています。

北海道は道明寺が主流である理由

北海道は日本を東西に分けるとすれば、もちろん東日本です。しかしながら、関西風桜餅と呼ばれる道明寺が主流という結果になりました。これは、一説には北前船(きたまえぶね)によると考えられています。北前船とは、江戸時代から明治時代にかけて、大阪から下関経由で日本海に入り北海道に行く西廻り航路の海運船のことです。関西と北海道はこの北前船で結ばれており、当時北海道の小樽には、米を含むあらゆる食材が入っており、食を伝える料理人や菓子職人も多くいたと言われています。これが要因で関西発祥の道明寺桜餅が現在の北海道では主流になっていると考えられています。

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