たい焼きには、「天然もの」と呼ばれるたい焼きと「養殖もの」と呼ばれるたい焼きがあります。
天然と養殖の違いとは
たい焼きにおいて、天然ものは一丁焼きという焼き型で一匹ずつ焼かれるたい焼きのことを言います。養殖ものは一丁焼き以外の方法で、一度に複数匹焼かれるたい焼きのことを言います。※写真上が天然、下が養殖。
たい焼きの「天然」「養殖」という呼び方の起源について
たい焼きの「天然」「養殖」と呼ばれる起源は、作家の宮嶋康彦さんがご著書「たい焼の魚拓」の中で使われたのが初めてと言われております。ただし、ここでいう「天然」「養殖」というのは、本物の魚のように「天然」が自然からとれた海の幸としてたい焼きで、「養殖」が人の手によって育てられたたい焼きという意味ではありません。海の幸としてのたい焼きというのは意味が分かりませんし、人の手によって育てられたたい焼きはすべてがそうです。この「天然」「養殖」というのは、あくまでメタファーであり、たい焼きの特徴を捉える上でわかりやすい表現としてお考え頂ければと思います。
天然もののたい焼きの主な特徴
皮は比較的薄く、パリッサクッ食感で、相対的にあんこの量が多い傾向にあります。また、しっぽまでしっかりとあんこが詰まっていることも多いです。一匹ずつ手焼きするため、火加減が細かく調整でき、上手なお店はあんこの瑞々しさが残りシズル感があることが多いです。
養殖もののたい焼きの主な特徴
皮は比較的厚く、フワッサクッ食感で、弾力性がある傾向にあります。中身はあんこだけでなく、チョコやカスタード、白玉入りなどで売られることも多いです。また、生地にも工夫があり、クロワッサン生地だったり、まぐろ型だったり、鯛型でも円型のものもあります。食べ方にも昨今斬新さが目立っており、アイスクリームカップに入れたり、パフェにしたり、冷やして食べたりすることがあります。たい焼きの可能性を感じさせてくれるワクワクするものが多いのは主に養殖ものと言えます。
天然と養殖をどう食べ分ければいいのか
その日の気分に合わせて取捨選択をしてほしいと思います。昨今、天然こそ本物という消費者心理が働いているように思われますが、これはメタファーであって、実際の魚の天然養殖の違いとは異なります。それぞれの良さがあって、大切なことは、今の自分にとってのベストを追求し食すことだと考えます。
たい焼きの魅力について
たい焼きには様々な魅力があります。以下にその一部をまとめました。
- まず、美味しいところです。
- また、鯛は縁起の良い食べ物で、たい焼きも縁起の良い食べ物として、昔から食べられてきました。一方で、和菓子にありがちな敷居の高い厳かな雰囲気を全く感じさせません。だからこそ、日常でちょっとハッピーな出来事があった日には気軽にたい焼きを食べて、よりハッピーな気分に浸ることもできますし、重要なプレゼン前や面接前など、願掛けとして出先でたい焼きを食べて、糖分をしっかり摂取し頭を働かせて、良いコンディションで臨むこともできます。
- また、わざわざお皿に盛りつけたりすることなく、ワンハンドでサクッと食べられるため、カフェやレストランなどお店に入る必要がなく、小腹が空いた時に、出来立てかそれに近い状態で気軽に食べられるところも魅力です。
- また、温かいところも魅力です。小麦粉系生地で、温かいあんこスイーツというのはあまりありません。同じような作り方をする今川焼くらいです。焼きたてのどら焼きが食べられるお店は無いこともないですが、極めて少ないのが現状です。小麦粉系生地のあんこスイーツ、例えば、どら焼き、あんパン、かりんとう饅頭、あんドーナツ等は、基本的に常温になっているものを食べます。「温かい生地系のものが食べたい!」という日はたい焼きは数少ない適役と言えるのです。
なぜたい焼きにこしあんがないのか?
鯛焼きにこしあんがないのは、生地とあんこの食感や味わいを合わせるためと考えられます。和菓子には本来、素材どうしの食感を合わせに行くという考え方があります。基本的にこしあんは、滑らかさ、喉ごしの良さ、味の繊細さを味わう傾向にあるため、ツルっとした材料や薄味のもの、冷たいものと組み合わせられることが多いです。例えば、水ようかんや、葛饅頭、水まんじゅう等がそれにあたります。一方つぶあんは、小豆の風味がしっかり残っており、かつ食べ応えがあるため、割と食感のはっきりした材料や味の濃いもの、温かいものと組み合わせられることが多い傾向にあります。例えば、たい焼き以外では、どら焼き、きんつば等です。もちろん和菓子の基本的な考え方なので、現代あんこ界において今ではたくさんの例外もあるため、あくまでひとつの参考として捉えていただければと思います。