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柏餅は味噌餡か小豆餡か都道府県別分布(第一回全国柏餅一斉調査より)

全国柏餅一斉調査を行いました。調査期間は2024年4月19日(土)~4月26日(土)とし、全国の協会員(=あんバサダー)に任意にメールフォームにより、柏餅のあんこについて回答を求めました。また本コラム後半では、柏餅の歴史や柏の葉の殺菌効果、保存効果、柏餅の葉に緑色と茶色の2種類がある理由、味噌餡や塩餡の歴史についても解説しております。

※報道関係者向けプレスリリース資料はこちらのページからどうぞ。

全国柏餅一斉調査とは

来る5月5日は子どもの日です。子どもの日には全国で柏餅が食べられます。端午の節句に全国で同じように食べられる柏餅ですが、中に入っているあんこの種類には微妙な認識の違いがあることがわかっています。おおよそ、東日本では小豆餡と味噌餡の2種類が存在する一方で、西日本では柏餅と言えば小豆餡のみと認識されています。全国柏餅一斉調査とは、日本各地に在籍する日本あんこ協会員に任意あんケートを実施し、居住地の柏餅について調査するものです。第一回目となる今回は、柏餅の中身に味噌餡を見かけたことがあるかを問い、味噌餡の柏餅が各都道府県別にどの程度認識されているか調査致しました。

柏餅とは何か

柏餅とは端午の節句(子どもの日)に食べられる日本伝統のあんこスイーツです。あんこを餅生地で包み、その周りを柏の葉、地域によってはサルトリイバラの葉で覆ってあります。作り方や材料は地域により微妙に異なりますが、おおむね上新粉や白玉粉でこねた生地であんこを包み、柏の葉で包んで蒸します。


※(左)柏の葉で包んだもの (右)サルトリイバラの葉で包んだもの
※他にも餅生地を二つ折りにしたものや、サルトリイバラの葉を2枚で挟んだものなど、形状やビジュアルは地域により異なります。

なぜ柏餅を調査するのか

柏餅は江戸時代より端午の節句に子孫繁栄を願って食べられてきた歴史あるあんこスイーツです。現代においても、5月5日は子どもの日であり、柏餅は子どもの健康長寿や立身出世を願って広く全国で食べられています。日本あんこ協会は「あんこを通じて世界平和を実現する」ことを理念に掲げております。世界平和の実現には未来ある子どもたちの笑顔と成長が欠かせません。つまり、柏餅を食べて子どもたちのより良き未来を願うことこそ、この時期に誰もができるあんこを通じた平和活動であり、我が国が誇るべきあんこ文化であると考えます。そして、そんな世界平和に通じるあんこスイーツ「柏餅」のことを深く知ることは、万人にとって大切であると信じて疑いません。

なぜ味噌餡を問うのか

歴史を紐解けば、江戸の武家を中心に端午の節句に柏餅が食べられるようになった当初から、味噌餡は存在していたと言われています。当時は小豆餡と並んで味噌餡が食べられていたにも関わらず、味噌餡の柏餅は全国に広まりませんでした。しかし、味噌をあんこに使用するという発想は、あんこの可能性を大いに広げる貴重なアイデアです。味噌餡の柏餅の存在を全国のあんこファンに問うことは、味噌餡に意識を向けて頂き、興味を持ってもらうきっかけとなります。味噌餡の柏餅を通して、あんこの可能性に気づいていただき、さらに充実したあんこライフを送ってもらえることを切に願っております。

調査方法について

当調査では、全国1万名を超える日本あんこ協会の協会員「あんバサダー」に向け、任意にメールフォームによる一斉調査を実施し、調査期間中に550名からの回答が得られました。設問項目は3つで至ってシンプルです。1つめの設問では、回答者の居住地の都道府県名を求めました。2つめの設問では、回答者の居住地において柏餅は「小豆餡しか見たことがない」「小豆餡と味噌餡の両方を見かける」「味噌餡しか見たことがない」の3択で回答を求めました。3つめの設問では、自由記述式で柏餅へひと言(愛の告白・ご意見・ご感想)を求めました。

調査結果について

(1)都道府県別の回答割合詳細

各都道府県において、「小豆餡しか見たことがない」と回答した人と「小豆餡も味噌餡も見かける」と回答した人の割合は以下のグラフの通りとなりました。なお、「味噌餡しか見たことがない」と回答した人はいませんでした。

(2)柏餅日本地図を作成

都道府県別回答割合詳細のグラフをもとに、柏餅日本地図を作成しわかりやすくまとめました。当地図から味噌餡の柏餅は関東圏を中心に、ほとんどの東日本で食べられていると同時に、一部関西圏でも食べられていることがわかりました。一方、主に中国・四国地方、九州地方においては、柏餅の中身と言えば小豆餡と認識されていることがわかりました。

(3)自由記述式による「柏餅への一言」

回答者には柏餅に関するひと言を自由記述式で求めました。地域によって柏餅のつくりに微妙な違いがあることがわかりました。また今回の調査で味噌餡の柏餅の存在を初めて知ったという回答者も見られました。以下回答を一部抜粋致します。
・味噌餡の柏餅があることを初めて知りました。
・静岡ではもろこし粉を生地に入れた柏餅があります。
・岡山県では柏の葉ではなくサルトリイバラの葉を使う和菓子店もあります。
・北海道では20数年前頃から味噌餡を見かけるようになった気がします。
・味噌餡は餅生地がピンクか黄色が多いです。
・白餅もいいですが、よもぎ餅のつぶあんの柏餅が好きです。

なぜ柏餅を端午の節句に食べるのか

端午の節句に柏餅を食べるようになった理由は、柏の葉のつき方に由来します。柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちません。新芽が子どもで、古い葉が親という風に見立てて、「家系が絶えない」縁起ものとして、子孫繁栄を願って江戸時代から食べるようになったと伝えられています。

なぜ味噌餡と小豆餡があるのか

柏餅が端午の節句に食べられるようになったのは江戸時代、9代将軍の徳川家重(1712年~1761年)から10代将軍の徳川家治(1737年~1786年)の頃と言われています。この頃、1718年(享保3年)には、日本で初めての菓子のレシピ帳「古今名物御前菓子秘伝抄」が刊行されました。これによると当時、柏餅のあんこは塩餡であったことが記載されています。煮て潰した小豆に塩を加えた全く甘くなく、しょっぱいあんこだったのです。この頃、砂糖の生産流通はまだ非常に少なく、外国からの輸入でごくわずかに入っていただけでした。ちょうど国産砂糖の生産が始まったのがこの頃で、享保の改革により推し進められました。砂糖が高級だったこの時代、柏餅には塩餡と並び、同じくしょっぱいあんことして味噌餡があったようです。なお、一般に塩餡から現代のような甘い小豆餡に変わっていくのは、国産砂糖の流通が進んだ江戸時代後期のことです。

どうして柏の葉で包むのか

柏餅の葉にはオイゲノールという人間にとってとても嬉しい香り成分が含まれています。オイゲノールは抗菌作用や保存効果が高く、保存技術に乏しかった昔には保存用として最適だったことが考えられます。オイゲノールは植物が外敵から守ろうと発散する揮発性物質(フィトンチッド)であり、フィトンチッドは人にとって癒し効果があることがわかっています。森に入った時に感じるあの浄化された気持ちいい森の香りです。癒し効果としては、自律神経の安定、不眠解消、免疫力強化などがあり、こういった効果も昔の人は知らず知らずのうちに感じとり、柏の葉を使用していたのではないかと考えます。

なぜ柏餅の葉の色は2種類あるのか

柏餅の葉の色には、緑色と茶色の2種類があります。これは端午の節句が旧暦から新暦に移った際に前倒しになってしまったことに由来します。端午の節句に柏餅が食べられるようになったのは江戸時代のことです。この頃は旧暦であり、端午の節句は現在で言う6月上旬頃でした。6月上旬ともなれば、柏の葉のサイズはしっかり餅を包める大きさにまで成長しています。色はもちろん新緑のグリーンです。しかしながら、明治時代に入り新暦がスタートすることで、日付が1か月ほど前倒しになります。つまり端午の節句も5月5日になったのです。5月上旬では柏の葉はまだ餅を包めるほどのサイズに成長していません。だから、前年に採集した柏の葉を蒸して乾燥保存し、翌年に水で戻して使うという方法がとられるようになりました。柏の葉の保存の際、蒸す工程で茶色くなり、これが原因で柏餅の葉は茶色になったと言われています。現代においては、塩漬けや真空パックの技術が進み、前年の柏の葉でも鮮やかな緑のまま保存することが可能となっていますが、柏餅の中に入っているあんこの種類を識別できるという利便性もあり和菓子店では緑色と茶色を使い分ける傾向にあります。

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