小豆と言えば、あんこの主原料です。本稿では、小豆の品種別に特徴をわかりやすく解説しています。
どんなあんこになってくれる?希少性は?などなど、あんこファンとして、最低限おさえておきたい”あんこに使われる上での”小豆の特徴について、学びましょう!
※なお、あんこの風味や食感などの味わいは、作る人やレシピに依る部分も多く、一概に品種だけで断定することはできません。下記は参考としてお読みいただければと思います。
エリモショウズ(北海道)
エリモショウズは、もっともスタンダードな小豆の品種です。
2015年頃より、きたろまんに作付面積を抜かれてしまいましたが、広く出回っている古参の味わいが魅力です。
昔ながらのあんこの味、小豆のあの独特のアクっぽい風味を求めるあんこファンにとって、エリモショウズは期待を裏切りません。
あんこ好きをアピールする時は、「やっぱエリモやな~」なんて言ってみて下さい。にわかファンではなく、あんこをずっと愛してきたベテラン感が周囲に伝わりますよ。
きたのおとめ(北海道)
色味、香り、味わい、食感、どれもエリモショウズに極めて近い、きたのおとめ。
それもそのはず、エリモショウズを母にもつ品種として誕生したのですから。薄皮で柔らかくなりやすいため、どちらかというと粒あんに向いているとも言われます。
1994年に北海道の奨励品種に、そして農林水産省で新品種認定を受けましたが、昨今のきたろまんの台頭により、現在の生産量は減少傾向にあります。
どんどん新しい品種が出てくる小豆の中で、きたのおとめはいずれ食べられなくレアな品種になるかもしれません。あんこ界における歴史の証言者となるべく、熱狂的なあんこファンにこそ、食べておいていただきたい小豆です。
きたろまん(北海道)
ここ約15年ほど、メキメキと生産量を伸ばし、ついに作付面積ナンバーワンを獲得した小豆界のニューウェーブ。
エリモショウズに比べて、少し風味があっさりしているのが特徴です。
粒は少し大きめで、ポリフェノール含有量が他の小豆に比べて多いとも言われています。新世代あんこの幕開けの立役者として、きたろまんは一度食べてみて、ぜひ覚えておきましょう。
しゅまり(北海道)
北海道の食をテーマにすれば、昨今、注目を集めるのが美瑛町。しゅまりは、その美瑛のご当地小豆で、2003年に新品種に認定された、わりと新しい品種です。
毎年、北海道産小豆の数パーセントほどしか作られておらず、あんこファンなら一度は食べておきたいブランド小豆なのです。
あんこになれば、小豆独特のアクっぽさはなく、藤紫色や砂糖の加減によっては赤紫色のあざやかな色味に仕上がってくれます。
名前のかわいさもさることながら、とても上品なあんことして、洋菓子界からのラブコールも最近多くなっているとか。高貴なるあんことして、今後さらに人気が高まることが予想されます。
とよみ大納言(北海道)
北海道で作られる大納言小豆の中でも、近年もっとも作付面積が大きいメジャーな大納言小豆。
大納言の魅力は何と言っても、粒立ちにあります。大納言と言えば、俵型をイメージしますが、とよみ大納言はコロンと丸みを帯びたかわいらしい形をしています。
たくさん作られ、使われているからこそ、餡定の粒立ちと豆の風味をあわせ持つ、大納言らしいあんこになってくれるのです。
丹波大納言(兵庫・京都)
兵庫県丹波市春日町東中(ひがしなか)は、丹波大納言小豆の発祥の地と伝えられています。
丹波栗、丹波黒豆とともに、丹波三宝のひとつとして、あまりにも有名です。
古くから兵庫・京都の丹波地方で作られ、小豆の最高級品種として京菓子の材料に使われてきました。
俵型で鮮やかな濃赤色が特徴で、あんこにすれば、コロコロほろりとした食感。ふくよかな豆そのものの味わいを愉しめます。「とにかくあんこには豆感を求めたい!」というあんこファンには必食です。
馬路大納言(京都)
馬路大納言(うまじだいなごん)は、亀岡市馬路町に伝わる在来品種の大納言小豆で、豆の味がとても濃い一方で、渋みのない上品な風味です。
一般的な丹波大納言よりも、さらにひと回り大きく、縦に積み上げると、4~5粒は積みあげることができるほど。歴史上の書物では7粒とも…。事実はどうあれ、これだけ大きい大納言小豆だからと言って、大味と思いきや、非常に繊細なあんこになってくれます。
黒さや大納言(兵庫)
幻の大納言小豆と言われるほど、見かけることがほとんどない「黒さや大納言」。
丹波大納言の原種とも言われており、国産小豆の生産量の1%未満(本当は、0.00…%の世界でデータが存在しません)。
とにかく希少性が高く、皇室献上品としても有名です。小豆のさやは茶色くなるものが一般的ですが、黒さや大納言は、その名の通り、真っ黒なさやをつけます。しかし、ひとたび、あんこになれば、色味は美しい藤紫色。小豆の皮はほろほろと崩れるほど薄く、口当たりの良い大変に洗練されたあんこになってくれます。
まさにギャップ萌えです。あんこファンなら「黒さや大納言を食べたことがある」の一言で、上級者確定と言えるでしょう。
備中白小豆(岡山)
日本三大小豆の産地と言えば、北海道、丹波、そして備中ですね。
備中と言えば、白小豆の発祥の地として知られています。ところで、白小豆ってご存じですか?
小豆は普通赤色ですが、白小豆はその名の通り、白いのです。乳白色から黄白色くらいで、サイズは一般的な小豆と同じくらいです。
もちろん白あんになるのですが、現代の白あんはほとんどが白いんげんが主流。白いんげんでつくる白あんは少し青っぽい味が特徴ですが、白小豆でつくる白あんはほぼ小豆の風味がありません。非常に滑らかで舌触りがよく、クセのない上品な白あんになってくれるんですね。
備中白小豆はとても珍しい品種で、高級な品種として重宝されています。
備中大納言(岡山)
白小豆と並んで、備中を代表する小豆が備中大納言です。
岡山県のカルスト地形は、石灰質で水はけがよく、ミネラルを多く含むため、酸性土壌を嫌う小豆の栽培にとても適しています。
備中大納言は、ふくよかで粒立ちが良く、小豆のうまみがぎゅっと凝縮された味わいを楽しめるのが特徴です。その良質さと希少性から“赤いダイヤ”との異名をとるほど。
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